この記事はスポーツアナリティクスAdvent Calendar 2021の13日目の記事となります。 (公開予定日からだいぶ過ぎてしまい、申し訳ございませんでした…)
はじめに
スポアナAdvent Calendarでは過去二回とも、NBAに関する記事を公開してきました。
- 2019年:「NBA選手のピークはいつか? PER評価指標を用いた分析」
- 2020年:「NBAにおけるデータ分析の活用について」
今年もNBAに関する記事を書こうと目論んでいるところ、とても大きなイベントが起きました。
それは、Stephen Curryが歴代1位のスリーポイント成功記録を樹立したことです。
STEPHEN CURRY BREAKS THE ALL-TIME 3 POINT RECORD! 🔥 - YouTube www.youtube.com
近年の彼の活躍からも、記録が塗り替えられるのは時間の問題でしたが、会場の盛り上がりや彼のリアクションからも分かる通り、モニュメンタルな出来事であったことには変わりありません。
そこで、今回の記事では、3ポイントに関連する記録や、過去の記録保持者と比較して彼がどれくらいすごいのか、また彼の記録を塗り替えることができる若手は今のNBAにいるのか?といったことを定量的に明らかにしていきたいと思います。
利用するデータ
使用するデータは下記のページより取得しています。
www.basketball-reference.com basketball.realgm.com
歴代のスリーポイント成功数記録の保持者
グラフ1では歴代の記録保持者のTop30にランクインしている選手を示しています。 先日Stephen Curryが記録を塗り替えましたが、以前の記録保持者Ray Allenはキャリアで通算2,973本のスリーポイントを決めています。
3位のReggie Millerが2,560本となっており、上位2選手が頭一つ抜けていることがわかります。さらにStephen Curryはまだ現役選手であるため、今後もこの数値は増え続けていくため、彼がどれほどすごい偉業を達成したのか、わかっていただけるかと思います。
その他のランキング上位の選手を見ていきますと、 4位 James Harden(2,509本)、10位 Damian Lillard(2,119)、11位 LeBron James(2,027)…と、現役の選手も多くが上位にランクインしていることがわかります。
試合数と成功数
次は、それぞれの選手が、記録を達成するために何試合かかったのか?ということを明らかにしていきたいと思います。
グラフ2では、歴代のスリーポイント成功数が多い選手上位250人を対象に、スリーポイント成功数 × 試合数の散布図を示しています。 歴代2位のRay Allenと比較してStephen Curryの方が圧倒的に少ない試合数で記録を達成したことがわかるかと思います。 また、記録保持者のなかでも赤色にハイライトされている選手(現役選手)が散布図の中でも左上に集中していることも特徴として読み解けます。
近年のNBAの得点スタイルが外からのシュートが多くなっている傾向とも重なり、興味深いグラフかと思います。
Stephen Curryの記録を塗り替えることのできる若手は今のNBAにいるのか?
ここからは、現役の若手選手にフォーカスを当てて、記録を破るペースでスリーポイントを決めている選手がいるのか?ということを分析していきたいと思います。
対象とする若手は、2015年以降にドラフト指名された選手を対象とし、その中からスリーポイントを最も多く成功させている上位30人を対象としています。
グラフ3では、対象となる若手の選手が、出場した試合数に対して今までどれくらい、スリーポイントを成功させてきたのか、示しています。
赤色でハイライトしているStephen Curryと、Ray Allenに関しては、キャリアの最初の450試合のみを切り取って描画しています。
このグラフを見る限り、幾人かの選手は初期のStephen Curryのキャリアと比較してより速いペースでスリーポイントを成功させていることがわかります。 例えば、Duncan Robinson、Luka Doncic、Trae Youngなどの若手の注目を浴びている選手なども見られます。
表4では、1試合当たりのスリーポイント成功数が多い選手Top10を表しています。 Stephen Curryが1試合あたり平均して2.989本決めているのに対して、Duncan Robinsonは3.242本、Buddy Fieldは3.024本決めているという結果が明らかになりました。
まとめ
本記事では、Stephen Curryのスリーポイント成功記録に着目し以下のことを明らかにできたと思います。
- 歴代の中でもStephen Curryのスリーポイント成功数は頭一つ抜けている
- 歴代2位のRay Allenと比較して、記録を樹立するまでにかかった試合数が圧倒的に少ない。
- 現役の若手選手の中ではStephen Curryのキャリア初期よりも速いペースでスリーポイントを成功させている選手がいる。
今後もStephen Curryの活躍を見つつも、若手にも注目していきたいと思います。