『ガタカ』 映画感想

ガタカ』(1997)
監督・脚本:アンドリュー・ニコル
制作費:$36,000,000*
興行収入:$12,532,777*

www.the-numbers.com

制作費、興行収入は上記のリンクから。

www.imdb.com


『トルゥーマン・ショー』を見たときから監督のアンドリュー・ニコルには興味があった。最近余った時間を割いてよく映画を見てるのでこの際、彼の作品も見ようと思ったのがきっかけ。見ての通り、制作費に対して興行収入が振るわず大赤字だったし、IMDbでも7.8/10と、めちゃくちゃ高評価を受けた映画ではないなと思っていたのであまり期待せずに見た映画だったけども、大きく期待を裏切られた。


過小評価されている映画だからこそ、他の人にオススメしたいし、自分的にも気になったシーンや感想などを言葉に残しておきたかったので、ブログに書くことにした。



あらすじ

遺伝子操作技術が確立されたそう遠くない未来。世界には二種類の人間しかいなくなった。遺伝子操作によって産まれた人間は、知能と体力に恵まれ教育や社会において優遇される「適正者」となる一方、自然妊娠によって生まれたものは劣勢な遺伝子を持ち、「不適正者」となる。この二つには社会的に大きな隔たりがあった。


主人公のヴィンセントは不適正者として生まれ、弟アントンは適正者として生まれた。ヴィンセントは身体的な劣度が激しく、心臓と視力に欠陥を抱え、さらには生まれた時に30歳までしか生きられないと医者に告げられた。しかし、ヴィンセントは小さい頃から宇宙飛行士になることを夢みる。もちろん、不適正者である彼にはなれる資格など与えられるはずもなく最初から可能性など微塵もなかった。しかし、成人した彼は、闇のDNAブローカーに出会い適正者であるジェロームという男のIDを購入し、自身を偽ることを決意し、宇宙局「ガタカ」に入局するまでにいたる。血の滲むような努力と生体認証をくぐり抜け、ついに火星の衛星タイタンへの探査船の宇宙飛行士に選抜された。


しかし任務開始の間近、事件は起こった。かれの上司が何者かに暗殺されたのだ。この予期せぬ事件により、警察当局がガタカの調査を開始することになってしまったのだ。


メインキャスト・クルー

イーサン・ホーク
とにかくかっこいい。初めてこの俳優を見たのは、多分『Boyhood』でのお父さん役。そこでは若い時期から味のあるおじさんまでを演じていたが、ガタカでは若さと、粘り強さ、さらには静かに物事を片付けるしたたかさみたいなものがしっかりと出ていて、完璧な配役なのでは?と思った。


アンドリュー・ニコル
トゥルーマンショー」の監督。代表的な作品は一通り見たけども、かなりお気に入りのSF映画監督なので、今後マイナーなものも見ていきたい。

感想

(これよりネタバレを含みます)

自分がSF作品を読んだり観たりして好きになるものには共通しているものがあると思う。

まず一つ目の条件にその作品がSFという名の監督のオタクイズムの押し付けでないということ。二つ目は、未来もしくは別世界での世界設定のみに収まらずそこから起こるであろう事象を想定し、それに続く状況がしっかりと導き出されていること。

特に二つ目が自分がSF作品に魅力を感じることだと思う。


ガタカにおいてはしっかりとこれ(エクストラポレーションというらしい)がなされていたと思う。

人間の有人宇宙開発が土星の衛星までも届いた時代。この時代には、宇宙技術に伴い医療技術(特に遺伝子技術)も当然のように発達しているだろうという仮定。その世界においては家庭の事情などのような現在にも通ずる普遍的なファクターにより、科学技術の恩恵を受けられる人間と受けられない人間による格差が生じる。その中でもシステムに抗おうとする者、またはそれを仲介し、利益をあげようとする者によって生み出されたマーケットが存在するだろうということ。


ざっくりしてはいるが、今作ではこの一つ一つの物事が論理的に結びつき、その中でストーリーが描かれている。こんな思考のプロセスが垣間見れたのがとても楽しかったし、他の人にもオススメしたい。


背景・ビジュアルエフェクト

SF映画にしては結構質素な感じの背景なんかがとても好き。

SF映画と名乗って、監督の好きなモノでデコレーションしたような単なる設定で終わっている映画は結構あるのではないだろうか。本作では、世界観がメインというよりも、その時代にいるキャラクターに焦点が当たっていたのがプラスポイント。

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終始、スタイリッシュなイーサン・ホーク。カッコ良い。


好きなシーン
海を泳ぐシーン。アンドリュー・ニコルの作品の『In Time』でも似たようなシーンがあったけども、そっちではあんまりシーンとして機能していなかった気がする。前後シーンの文脈などめちゃくちゃだったし、個人的にAmanda SeyfriedとJustin Timberlakeの裸のシーンなんて興味なかったし、単に不快だった。


でもガタカでの海のシーンはとても象徴的で、キャラクターの内面とか歴史とかが存分に詰まっていたと思う。二人のキャラクターの世間からの評価や実際の内面。『兄弟』という関係だからこそ見せる本質的な部分。全てが象徴されていたし、画として美しかった。二回くらい出てくるので注目して見て欲しい。


というか自分は結構、『無防備な人間が海で泳ぐシーン』ていうのが結構好きなのかもしれないと気づいた。
自分の中で印象的なのは、『真夏の方程式』での最後らへんのシーンとか涙が出そうになったし、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で少佐がダイビングしているシーンも良し。『The Walk』でJoseph Gordon-Levvittがワイヤーの上で悟りを開く(笑)的なシーンとか、『Gravity』でGeorge Clooneyが宇宙遊泳しているシーンとかにも通ずる物を感じる。



youtu.be

少佐がダイビングをしてるシーン。



好きな理由は結構漠然としているが、「制御が効かない場所」において、その場所自体を考慮しないとかその場所に身を任せるとか言った感じが好きなのかもしれない。


まとめ

人にオススメしたい映画だし、最も過小評価されてる映画の一つなのではないだろうか。