『コーヒーのグローバルヒストリー』 読書感想①

小澤卓也著、『コーヒーのグローバルヒストリー ~赤いダイヤか、黒い悪魔か~』を読みました。

本全体としては、コーヒー産業で大きな役割を果たしている5カ国を、「生産する側」と「消費する側」の二つに大別して、時系列的に歴史を紹介していました。その一方、コーヒーという嗜好品が、どのように各国に影響を及ぼしてきたかということも説明されていました。
今では自分も1日平均1~2杯は飲んでいるコーヒー。それに関して雑学的な知識を少し学んでみるのも面白いかなと思ったためこの本を読みました。非常に興味深い読書だったため文字に起こしておきたいと思います。

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amzn.asia


この記事と、次の記事との二つに分けて読書感想を書きたいと思います。


コーヒー経済
コーヒーの流通や生産、価格決定など経済的な側面を書かれている部分が冒頭にありました。

昨今の資本家や企業家たちは、コーヒーの先物取引によって大損害を被る危険を回避することができる。彼らはコーヒー価格が上昇した場合にはそれに応じて上積みされた利益を手にすることができる一方で、コーヒー価格が下落してもその損害を最小限に抑制することができる。すなわちコーヒー相場の変動に伴うリスクは、コーヒー売買で巨額の利益を上げている大富豪をすり抜けて、日々の暮らしに終われる農民のもとに押しよせてくる。

近年、途上国と先進国間での一次産品貿易に関して問題はたくさんありますよね。
価値を生み出している人間に適切な利益が配分されていないのではないのか。そのような疑問は数え切れないほどあります。しかしこのようなことは今の世の中では奇妙ですが当然になっていますよね。本書はこのような史実や事実を述べることを読者に知ってもらうというテイストで書かれているので、この問題に関しては深くは踏み込まれていませんでした。

比較的裕福な国で生活をしている自分には想像もできないような賃金で働いている人々が南米に大勢いる。そのような人々が丹精込めて作ったコーヒーの豆が彼らの目に届かないところで、投機の対象になったりマネーゲームにさえ使われているというのが現状のようですね。

NYEでの価格決定
では、コーヒーの価格形成ってどこでなされているのでしょうか。様々なモノが取引されているので有名な場所はニューヨーク商品取引所ですよね。コーヒーの豆もここで取引が行われているみたいです。ちなみに国際コーヒー機関(International Coffee Organization)という組織もあるそうです。
International Coffee Organization - Historical Data on the Global Coffee Trade


コーヒーだけに限ったことではないですが、自分の身の回りに溢れている一次産品の多くは実際にその利益の多くがそれを作った人々に還元されているということがあまりに少なすぎますよね。かといってその流通のプロセスを省いたり、彼らの存在を非難したりすると、実際には自分たちが享受しているサービスっては激減してしまうと思う。いくら問題があるからって結局はこれは根本的な解決策はないのかもしれませんね。

革命とカフェ
話はガラッと変わって、この話題はカフェという空間の性質について論じられていた、部分でした。これはとても興味深かったテーマでした。

コーヒーという嗜好品が出現したことによってそれを消費する空間であるカフェも同時に歴史的に出現したということ。日本ではカフェの普及には多少時間がかかったり、障壁が多かったりしたらしいですが、ヨーロッパでは比較的スムーズに浸透したみたいです。

カフェの持つ特性の一つは、一度人が足を踏み入れば、あらゆる束縛から解放されるということでした。

訪れた客は誰でも一杯のコーヒーの代金と引き替えに店外の世界を支配する身分制度のくびきから解き放たれ、自由な空気を吸うことができた。

このように様々な束縛から解放された人々は、外部からの介入を受けずに自由な議論をしていた。そしてそれは、当時のヨーロッパ諸国では知識人たちもカフェに訪れていたのです。彼らはカフェに集まり、議論をした。今のようにテレビや新聞などがない時代においてそのような場所が情報を交換する場所としていかに重要な場所であったか容易に想像できますよね。そのため、カフェによって世論は形成されて行ったと本書では説明されていました。

そしてそのようなコーヒーの特徴はフランス、パリでもそれほど大きな違いはなかったのです。こうしてフランスの自由主義ナショナリズムがカフェの中で生まれたのであると、本書では説明されていました。

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flic.kr


普段何気なく飲んでいるカフェやふらっと立ち寄るカフェ。このように日常に密接な関係をもつ物事も一歩足を踏み込んで背景や特性などを見てみると様々な物事が見えて来ます。
身の回りに溢れているモノゴトや事件などに常に疑問を持ち続け、そこから学びを得るということの重要性をなんとなく再認識できたと思います。

続く

P.S.
上に張っている写真もそうですが、一時期白黒写真にハマっていました。
それらの写真などはflickrに上げているので興味があればご覧ください。
www.flickr.com