『凡人として生きるということ』 読書感想

初めて押井さんの本を読みました。
本書で取り上げられているテーマは多岐にわたり、人間関係、恋愛などといった人間の本質的な事柄から、マクロ的な視点で捉えた日本や世界での格差問題といった事柄も取り上げられていました。このような点に対して押井監督独自の問題提起から始まり、順序だてて述べられた彼の考察が綴られた作品でした。
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その中の一つで、格差問題に対する彼の考察が非常に興味深かったです。

「人間は自由で平等である」。この前提には誰も反対しない。おそらくスターリン毛沢東も、ポル・ポトでさえも反対はしないはずだ。だが、人間を自由で平等でいさせるための社会システムを作ろうとした途端に殺し合いが始まる。

人間は平等。はい、その通りです。でもちゃっかり儲けているやつもいれば、商売下手なやつもいる。それが人間の面白いところ。せっかく才能があるのに、酒におぼれて、人生を台無しにするやつもいる。わけのわからない映画を作って嬉々としている監督もいるし、体に悪いとわかっているのにタバコをやめられないやつもいる。いやはや、人間とはどうしようもない存在ではないですかーーー。
とまぁ、このくらいの余裕で人間社会を眺め渡した方が、社会はうまく行くような気がするのである。

一部監督自身に対しての皮肉にも聞こえますよね…笑
この文脈の前後においては人間の平等と人間の多様性を否定することの類似点や、歴史上の革命家たちの思想や民衆への弾圧行為などを通じて、「平等」という言葉によって導かれる社会の姿などが論じられていました。
極端に人間の平等性を追求しようとすると、最終的には個人の個性といった部分が全面的に否定されてしまうということでしょう。

昨今、日本国内においても頭脳や人口の流出などで起きる地域間格差などが大きく取り上げらていますよね。絶対的な解決方法のようなものはいくら探してもなくて、一つ一つミクロな視点から見て積み上げられた問題に対処していくしかない現在で、このように言ってしまえば楽観的な味方をしているところなんかはリアリストでオヤジっぽいの押井監督ならではって感じがして好きです。

近頃、このような格差社会に対して、実際に格差があることってホントにいけないことなの?それって全部平等にしなければいけないことなの?とかって根本的なことを結構疑問に思うことが多いです。考え始めたらきりがないのですが…
自分が実際に疑問に思っていることに対して、民主主義とポルポトヒトラーなどを比較して考えるという思考の流れを面白い試みであるなと思いました。結論だけ見ると、極端な意見ですがその中では論理的な文章で丁寧に説明されている。読み進めて行くうちに監督は実際現実世界をどのように見ているのだろうか?という感情が尽きませんでした。

もう一つ興味深いなと思ったのが、人と社会との関係というトピックのところ。

社会の中に自分の席を持つことの面白さ以上に面白いことはこの世に存在しないし、そのことによる安心感以上の安心感はないと言っていい。

世の中に影響を与えるということ、社会にコミットするということは、実は仕事において他には手段がない。だからこそ、仕事といものは麻薬的に面白いのである。

このように押井監督は文中で述べています。自分の周囲の就活生や大学の友人と仕事について話すときに割りとネガティブな感情も抱くこともあるのですが、仕事とは本来押井さんの述べるようなものであると再認識できました。
残りの人生を生きていく上でのキャリアのファーストステップになるであろう新卒で就く職に対して不安がないと言えば嘘になりますが、自分のペースでやりたいことや将来の自分の家族に誇れるような道を現在模索している最中であります。先日ある企業の方とお話した時に、どれだけ自分が提供するサービスが人の役に立つかについて深く考察するといいよ的なことを言われたりしたりしたので、今後とも漠然としたことを足を踏み込んで考えることを続けていこうと思いました。

本自体は別に押井監督の作品を知っていなければ全く楽しめない、とかっていう類の本ではないで、お暇な時間がある時にできればお読みください!

P.S.
今年の夏休みは実は大学に入ってから初めてずっと日本にいる予定です。笑
そんな中一つ達成したいことはウィスキー検定三級を取得です。兄から教えてもらってウィスキーを好きになったので勉強して知識も方もつけて行きたいなぁと思ったので受けてみます。
ということでこの前、近場の山崎蒸留所に行ってきました。
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工場見学の後にはテイスティングをさせていただきました。全部込みでツアー代1,000円...!